漱石の著書は、英語・英文学の領域において、あるいは英語教育の上において、さらに「英学」が意味するより広い、より大きな範囲において再検討することはきわめて意義があります。
前向きの姿勢で、石川遼 英会話のような学問と教育の第一線に活躍している人々は往々にしていう、
「歴史は過去のことばかり取り上げて現在のわれわれがこれからどうすべきかという問題に無関心である」
・・・と。
なるほど過去のモデルからそのまま未来の解決は出て来ないでしょう。
過去と現在との間に接線を引くことは必要です。
しかしこの接線を引くことによって歴史は大きな意味を持ってくるのです。
また歴史上の事実を取り上げるとき、それは死んだ過去の審査ではない、常に現在の視点に立って、常に現在の問題意識を通してこれをわれわれは取り上げるのです。
いま福沢諭吉全集を前にして、その第7巻の冒頭にある、自伝文学の最高傑作の一つと称せられている、『福翁自伝』を読みかえして・・・
私は、日本の英学はその精神において福沢に始まって、また再び福沢に帰って行かねばならないという感を新たにしました。
それはたんに蘭学から英学への切り換えを行なったあの決定的な、歴史的な事件のためだけではありません。